I LOVE YOUが言えない

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ひどくネガティブだからとか、誰の事も本気で愛したことがないからとか、
そういうロマンティックな理由ではなくて、
単純に「愛してる」「I Love You」がとても陳腐でありきたりで、重みのない
なんでもないような言葉なような気がして、「愛してる」が言えない。

『I Love Youの訳し方』、もしかしたらこの本を読めば
本当に誰かに伝えたい「愛してる」の言い換え方が載っているかもしれない、そんな期待をして読み始めた。

感傷的に、情熱的に、個性的に、狂気的に、浪漫的に、

最近ときめきといえば聞こえのいい、肋骨が軋むような体験をしたのだけど、
この本に書いてあるどの「愛してる」を読んでいる時も、
同じように肋骨が私以外の誰かにも聞こえてしまうのでは無いかと思うくらいキシキシとうるさく声をあげて困った。

「キスしてもいいですか」 P44 島本理生『君が降る日』
「あたしあなたにさわりたい」 P119 赤坂真理 『ヴァイブレータ』

この二つは特に愛おしいと思った。
同時に「相手が、誰かが、きっと、そうしてくれる」と他力本願で
私から関係を変えていこうなんてこれっぽっちも思っていない自分が恥ずかしくなった。

キスしたり、人に触れたり、場の雰囲気でしょ、
とスレたことをずっと思っていたけど、
自分から望めばキスする機会を得られることもあるし、望んだ人に触れられるかもしれない。
他力本願では望んでいるよりもずっと遅いスピードでしか関係は発展していかないのだ。
当然だけど、そんな当然のことも忘れてしまって、日々の生活を反省した。

愛してる、は寂しい。

誰もがみんな寂しさを感じているものだと信じて疑わなかった。
だから敢えて言葉にしてこなかった。
誰かといれば、その寂しさも解消されるものだとも思っていた。
だから、せめて一人でいる時間の寂しさを大事にしているつもりだった。

一人でいる時の寂しさはいつか忘れてしまうし、
大人数でいる時に感じる寂しさは慣れてしまって、
大事な人と二人でいる時に感じる寂しさは、私だけが感じているものだと思っていた。

「愛してる」は寂しい。
それで全てが伝わると思ってしまうから。
人間はもっと声に出して、言葉を伝えてもいいのに
苦手だから、言葉を知らないから、どうしても簡単な言葉に頼ってしまう。
愛してるも同じだ。
五音に詰め込まれた全てが、発した瞬間に全て伝わると思ってしまうから
詰め込まれていた感情は霧散してしまって、つまらない。
本当は何も伝えられていない。だから寂しい。

愛してるを使うくらいなら、もっとわかりやすくて、明確で、
私の口から離れた時から、相手に伝わるまでの間で
熱量や質量や、温度が変わらないそんな言葉を使いたい。

全部の感想

『I Love Youの訳し方』は言い換え方を教えてくれると思って読み始めたが、
本当に知ったことは、「愛してる」を伝える如何なる言葉も陳腐で、ありきたりな、
ただの言葉だということだった。

ただ、どの言葉をとっても口から発されて、相手に伝わるまでに
色も形も、質量も熱量も変わらずにきちんと愛してると伝わる。
全部一言で言い換える言葉だったら、もっとこの本のことを好きになれていたかも。

今まで、大事な人に感じていたあの純情も、この劣情も、劣等感も、
知って欲しいとおもう傲慢さも、私の手元を離れて、だれかのものになった時も変わらず
私が端々に散りばめた「愛してる」が色や形を変えることなく
相手に伝わっている、少しくらいそんなご都合主義を考えても、いいよね。

キザなこと、言われたいな。